五家荘見聞録 第16回
山奥に存する五家荘には、様々な言い伝えが残されとります。今日はその中から、「セコ」について話しましゅうかね。
「セコ」とは、九州で鹿児島を除く特に山間部で信じられる妖怪のような存在で、五家荘で語られる「セコ」とは、目には見えず、音や気配のみで存在を確認できる物の怪のような存在であると信じられています。例えば、ヤマメ釣りをしていて、もう20匹ばかり釣ったと思って魚籠を見てみると、1匹も入っていなかった。これはセコの仕業に違いない…、とか、川辺でテントの中で寝ていると、確かに何かの気配はするばってん、何もおらん。こらー、セコばい!
という感じで、イタズラをするような存在として地元の人には今でも信じられています。
また、「あすこの谷には家ば建つるとでけん。あすけにゃセコの出るけん。」などと、セコを利用して土砂崩れや落石など、災害の起きやすい場所を避けるための戒めとして語られることもあります。
人によっては、「わたしゃ、あすこには行こごたなーか。セコの出るもん!」などと、仕事に行きたくないがための言い訳に使うこともあったりして。また、遭難者救助に出動した地元の人がその帰り道に遭難したことがあり、その理由として、セコに惑わされて全く違う道ば行かされたこともあったげなです。
本人曰く、「バカにすんなぞ、セコはほんなこておるとぞ!」げな。
山奥の秘境、五家荘にはまだセコの要るごたる。
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